2003/1/10

                       h199103 平井秀幸

原発の是か非か

〜エネルギー問題(需要と供給)・環境問題から原発の必要性を考える〜

 

1.背景

  私達が生きていく上で、エネルギーは必要です。近年、人口の増加にともなって、エネルギーの使用量は年々増加しています。エネルギーには様々な問題があり、枯渇の心配があるものや、環境に様々な影響を与えているものもあります。そんなエネルギー問題の中でも、原子力は、一番不安の多い問題だと思います。原発は大きなテーマなので、そこで、エネルギー問題・環境問題などの視点から、このまま原子力を続けていいものなのか調べてみました。

 

2.目的

原発がもたらす影響(エネルギー・環境)、原発の安全面からの原発の必要性を含め、このまま原発を続けていくべきかを考える。

 

3.原子力発電の仕組み

核分裂により大きな熱エネルギーが得られます

 

図1.核分裂の仕組み

[図]核分裂の仕組み

 すべての物質の原子核は陽子と中性子からできています。特に陽子と中性子の数の多い原子核のうち、例えばウランやプルトニウムなどは核分裂を起こしやすい性質を持っています。
 このような性質の原子核に外から中性子が飛び込むと核分裂が起きて2つ以上の小さい原子核に分裂し、同時に大きな熱エネルギーを発生します。この熱エネルギーを発電に利用したものが原子力発電です。1)

 

原子力発電は、原子炉の中でウランが核分裂する際に発生する熱で高温・高圧の蒸気をつくり、タービンを回して発電します。

4.原子力の現状

 <日本>

日本では1961年に東海発電所(出力16.6万kw)の建設を始め、1966年7月に日本で初めての商業用原子力発電所として営業運転を開始しました。2)

以来各電力会社によって建設が行われ、2002年8月現在には、53基(電気出力総計4590.7万kW)の原子力発電所が運転を行っており、4基が建設中です。3)また、図2を見ますと、原子力発電所は全国に広く分布し、すでに私たちの生活を支える貴重なエネルギー源になっているのがわかります。

2002年1月末現在で、我が国の電気の約1/3を賄っています。今では、原発大国の1つになっています。

図2.日本の原子力発電所2)

[図]日本と世界の開発状況

総発電電力量     原子力   34.6%

(9240億KW)  水力     9.5%

           火力    55.2%  石炭   20.5%

                        石油    7.9%

                        天然ガス 26.8%

           地熱     0.4%

           新エネルギー 0.3%

       図3.日本の発電電力量に占める原子力発電の割合3)

<世界>

世界で初めての商業用原子力発電所がイギリスのコールダーホール(現在も運転中)に完成し、 運転を開始したのは1956年です。4)
 その後、各国での原子力発電の開発利用は着実に進み、 2001年12月末現在、全世界で432基の発電用原子炉が運転を行っており、 その約1/4をアメリカが保有しています。4)次いで、フランス、日本、ドイツの順になっています。アジアでは、日本の次に韓国が多く所有しています。(図4を参照)

 

図4.日本と世界の開発状況4)

[図]日本と世界の開発状況

 

5.いくつかの視点からの検討

 

@.二酸化炭素の問題

化石燃料を使用すると、二酸化炭素を大量に排出します。二酸化炭素は、温室効果ガスの1つであり、地球温暖化につながります。

日本では温室効果ガスの約8割がエネルギー起源の二酸化炭素(CO)であり、1997年のCOP3で採択された京都議定書では、COの排出量を2010年度において1990年比マイナス6%に抑制することとしていることから、省エネルギーと化石燃料への依存度を可能な限り減らすことが求められています。5)

そこで、二酸化炭素(CO)を排出しない原子力発電を推進する意見も出ています。次ページの図5より、化石燃料と原子力を比べると、あきらかにCOの排出量に差があり、原子力の方が二酸化炭素の排出問題では、環境によいことになります。けれど、原子力も設備や運用をしていく上で、二酸化炭素を排出しています。(図5参照)ですから、COを排出しないクリーンなエネルギーは、存在しないと思います。

   図5.各種電源別のCO2排出量6)

  A.安全性

T).原発事故

原子力発電をしていく上で、事故への不安があります。誰もが知っているチェルノブイリの事故や、日本では東海村の臨界事故などがあります。そこで、事故を簡単に説明し、安全性について調べました。

 

チェルノブイリ

1986年4月26日、旧ソ連ウクライナ共和国のチェルノブイリ原発4号炉で発生した事故は、いうまでもなく原子力発電史上最悪の事故であった。爆発し崩壊した原子炉から放出された放射能は、北半球のほぼ全域を汚染し、8000kmあまり離れた日本にも飛んできた。7)

また、ヨーロッパの汚染食品などによってもチェルノブイリからの放射能は世界中に拡散したことになり7)、大量の放射線被曝による急性障害が200名あまりに現れ、結局、31人が死亡した。8)

 

 

 

 

東海村(JCO臨界事故)

    1999年930日午前1035分頃、茨城県東海村に所在する貴社の核燃料製造工場である東海事業所ウラン加工施設で、臨界事故が起き、住民を含めた数十人の被曝をもたらし、10時間も経ってから半径10キロ以内の住民31万人に屋内避難を要請しました。9)

 

事故に対しての安全対策

原子力発電所では安全確保の基本である「多重防護」の考え方にもとづき、何段階もの安全対策を講じています。10)

 

安全確保のポイントは次の3点に集約されます。

・原子炉を止める

・燃料の熱を除去するために冷やす

・放射性物質を閉じ込める

 


考えとして、まず異常な事態が起こらないようにすること、そして仮に異常事態が発生したとしても事態の拡大を防止し、周辺へ放射性物質を放出して環境へ影響を与えることがないようにしています。10

 

図6.安全確保のしくみ10

その他の災害に対しての安全対策

 〇地震対策

  日本は地震の多い国なので、たとえ大きな地震が起きても、周辺の方々に放射性物質による影響を及ぼすことのないように気をつけねばなりません。原子力発電所では建設計画から実際の建設、運転にいたるまで、次のような万全の地震対策をしています。10

@断層の上にはつくらない

・地質調査やボーリング調査などにより活断層のないことを確認して、発電所を設置しています。

A岩盤上に直接建設

・岩盤上の揺れは、表層地盤に比べて2分の1から3分の1程度、といわれています。

B最大の地震を考慮した設計

・周辺の活断層や、過去に発生した地震などを詳細に調査し、考えられる最大の地震に耐えられるようにしています。          10

 

 〇防災対策

JCO臨界事故を受けて、従来からの原子力防災を強化するため、新しい法律(原子力災害対策特別措置法)が制定され、新しい原子力防災体制が整備されました(2000616日施行)。10

これによって「原子力事業者防災業務計画の作成」「原子力防災組織・管理者の設置」などが義務づけられ、万が一の異常事態に国・自治体・電力会社・関係機関が一体となって迅速に対応できるように、拠点施設となるオフサイトセンターと呼ばれる施設が、原子力施設のある地域近郊に設置されることになりました。10

 

U).放射能廃棄物問題

    原子力もその利用に伴い、他の技術と同じように、様々な形態の放射性廃棄物が発生します。放射性廃棄物は他の廃棄物とは異なり、人体に影響を与える可能性のある放射線を出す廃棄物です。11)

    放射線が人体に与える影響として、急性放射線障害、晩発性放射線障害11)の2つがある。急性放射線障害一度に大量の被曝をしたときに出る症状で、晩発性放射線障害は被曝して数年とか数十年してから現れる障害で、ガン・白血病や遺伝障害などが含まれます。晩発性障害については、たとえ微量の被曝であろうと、それなりに将来ガン・白血病などにかかる確率が大きくなる。12)

★どれぐらいで被曝か?

 放射線を受けた場合、一般に全身に受けた放射線の量がどれぐらいで、被爆するのか。

250ミリシーベルト以下:臨床症状はなし

250〜500ミリシーベルト:リンパ球の一時的減少

     約1000ミリシーベルト:嘔吐・全身倦怠などの症状

4000ミリシーベルト:30日で約50%の人が死亡

7000ミリシーベルト以上:100%の人が死亡13)

★原子力発電所周辺の放射能

原子力発電所では、運転にともなってごくわずかですが、放射性物質を含む気体や液体を環境中に放出します。14)そこで発電所は、周辺の人々の受ける放射線の量を、年間0.05ミリシーベルト以下になるように管理しています。

発電所の周辺では、電力会社のほかに地方自治体も、放射線監視装置に よる空間放射線量を独自に測定(モニタリング)しています。また、海底 土、土壌、農水産物などを定期的に採取し、分析して、周辺に放射能の影響がないことを調べています。

実績は0.05ミリシーベルトを大きく下回り、年間0.001ミリシーベルト以下となっています。その結果は、自治体の公報などで公表されています。10)

 

★身近に存在する放射能

放射能や放射性物質は、原子力の利用によって生まれたものではなく、身近に存在しています。自然放射線として、大地・宇宙・食物・空気中のラドンなどから、平均して1人当たり年間約2.4ミリシーベルトの放射線を受けています。15)このほかにも人工放射線として、X線(レントゲン)の診断から1回当たり約0.05ミリシーベルトの放射線を受けています。16) 

 

★放射能の処理

「高レベル廃棄物の放射能廃棄物の地層処理は、もともと地中にあったウランを地中にも戻すのだから大丈夫」というような説明である。

しかし、ウラン燃料1トン中の放射能は、100ギガベクレルであるのに対し、核分裂後に取り出された使用済み核燃料1トン中の放射能は、100億ギガベクレルである。つまり、ウランを原子炉で燃やせば、核分裂によって放射能が1億倍に増大することになる。17)

    そのようなものを再び地中に戻せばいいといった考え方には、疑問が生じます。

 

  B.原発の必要性

もし、今原発を止めたらどうなるか?

   総電力量の1/3の電力を占めている原発を止めると、電力が足りず停電が起きる。これは、率直な僕の意見ですが、実際はそうではありません。                

  図7.1997年8月の電力需要18)          

日本の電力需要は、真夏のクーラー使用によってピークになることが多く、そんな時期でも日中の数時間以外は、水力、火力だけでまかなえる設備があることがわかります。(図7参照)

もちろん、水力・火力もいつも100%稼動するのは無理としても、そこまで原子力に頼る必要があるとは思えません。しかもなお、この数字には渇水水力の発電設備容量が含まれてなく、もし含めれば、真夏のピーク時に原発を止めても余力を持つことになり、原子力のすべてが過剰設備となる。19)

 

時間帯別発電なぜ原発の発電量が多くなるのか?     図8.電源構成18)

<発電の運用の仕方から>

電気は貯めておくができないし、24時間電気を安定して、電気を供給するには電源を多様化しておくことが必要です。6)

そんな中で、原発は巨大なシステムなので、出力を需要に応じて自由に変動させることができない。そのため、昼夜を問わず消費続ける(ベースロード)電力は原発、昼間の変動する部分(ミドルロード電力)は主に火力発電が供給し、夏の鋭い部分(ピークロード電)は水力発電が電力を供給している。

   このような発電施設の運用の結果、原発は昼夜を通してフル稼働するため、稼働率が80%にまで、達しるのに対し、火力や水力は変動部分を調整するため、稼働率は40%前後にとどまっています。19)

 

 <資源の問題>

   原子力発電の燃料となるウランは石油と同様、日本国内には乏しく、に海外からの輸入に依存しなければなりません。しかし、ウランの供給国は、アメリカ、カナダ、オーストラリアなど政情の安定した国であり、安定した供給が期待することができます。それに対し、石油、LNG等の資源は、輸入量の約半分、それ以上を一つの地域や国に依存しており、その地域や国の政治および経済的事情によって、日本のエネルギー供給安定性が大きく影響される可能性が高い国々です。20)

この結果、石油の価格よりウランの価格が安定しているので、原子力発電の発電量が増える原因になる。20)

過去にオイルショックや戦争などで、石油の価格が上がっていることから、この理由は分かる気がします。

 

6.私見

   このテーマを研究してみて、始め、化石燃料は、枯渇の心配があり、地球温暖化にも悪影響を与えることから、どっちかというと原子力発電を推進していました。しかし、原発の危険性の面から考えると、原子力発電を控えていくべきだと思います。安全対策が、ものすごいことは、よく分かるが、その分危険が大きいことを表していると思います。しかし、現在の状況では、新エネルギー(太陽、風力等)は、密度の低さや供給が自然条件に左右されるといった課題や、今存在するエネルギーに比べて、コストが高い等の課題があります。ですから、まだしばらくは原子力発電と付き合っていかなければならないと思います。

   付け加えなのですが、調べていくうちに化石燃料と一緒で、原子力の原料であるウランも枯渇の心配があるし、枯渇の心配は、思っている以上に少なく、原発の是非を考えるのに適してなかったので、省きました。

   原子力発電が二酸化炭素の排出量が少ないからといって、地球温暖化の対策に使うべきではないと思う。もっと違う省エネや新エネルギーの開発に期待したいです。

 

 

 

<引用文献>

1http://www.atom.meti.go.jp/siraberu/sikumi/01/index01k.html

2http://www.atom.meti.go.jp/genjyo/index01.html

3http://www.atom.meti.go.jp/siraberu/atom/05/index01k.html

4http://www.atom.meti.go.jp/genjyo/index02.html

5) http://www.fepc-atomic.jp/basic_study/policy/index.html

6) http://www.fepc.or.jp/menu/nuclear/nuclear2.html

7グレゴリー・メドベージェフ著、松岡信夫訳、「内部告発」、技術と人間、1990年6月

8) 松岡信夫、「ドキュメント チェルノブイリ」、緑風出版、19888月.

9)http://www.jtu-net.or.jp/kiji/99/10/10n4.htm

10http://www.fepc.or.jp/menu/nuclear/nuclear3.html

11) http://www.atom.meti.go.jp/siraberu/r_rays/01/index01k.html

12) http://www-j.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/Chernobyl/GN/GN9205.html

13http://www.atom.meti.go.jp/siraberu/r_rays/02/index01s.html

14) http://www.energia.co.jp/energiaj/company/atom/tanken/houshasen/

hoshasen_4.html

15) http://www.geocities.jp/tobosaku/kouza/energy2.html

16http://www.atom.meti.go.jp/siraberu/r_rays/01/index02k.html

17)広瀬隆、藤田祐幸、「原子力発電で本当に私たちが知りたい120の基礎知

識」、東京書籍、2000年、pp128

18) http://www.atom.meti.go.jp/siraberu/r_rays/01/main01k.html

19)広瀬隆、藤田祐幸、「原子力発電で本当に私たちが知りたい120の基礎知

識」、東京書籍、2000年、pp29〜pp32

20http://www-atm.jst.go.jp/pesco/ENERGY/KURASI5.HTM#06