2002/12/13
H101006 石川理香
1. 問題の背景
足尾銅山から始まり、いろいろと騒がしてきた水質汚濁。昔は工業排水がその原因のほとんどを占めていましたが、規制などにより抑えられ、原因が工業排水から家庭用排水に移り変わってきました。
また、これまで人が捨てたものを無限に飲み込むかのように思われてきた川や湖など、家庭のごみや工場から出る廃棄物はもちろんのこと、使用済みの核燃料までもが沈められています。₉
これらのことは私の住んでいる市でも例外ではなく、市と市にまたが湖もその対象とされています。そのため、水質汚濁について、いろいろな人が活動しています。
2. 報告の目的
河川の汚濁の多くは、生活排水をそのまま流していたことにあり、防止策として『下水道や浄化槽の普及を上げること』₁ が多く取り上げられています。
しかし、実際「なぜ取り付けたほうがよいのか」その理由と、もしつけるのならばどちらのほうがよいのか。水質汚濁防止となる下水道と浄化槽について主に処理技術面と、環境への影響の面といった視点から、比較をしたいと思います。
3. 対象とする問題の概要
1.
下水道
辞書では『下水を流すための排水設備。法律では、下水処理施設を含めていう。』₈となっています。
Ø
下水道の種類
下水道には、市町村が、『建設や管理をする、公共下水道』₂と、『二つ以上の市町村の下水を集めて処理をする、流域下水道』₃があります。
また、各家庭の排水を、『汚水』と『雨水』を一本にあわせて下水管に流すものを「合流式下水道」、そうでないものを「分流式下水道」といいます。₁₅
図 1 合流式下水道(左)と分流式下水道(右)の違い₁₅
Ø
長所が生かされる条件
下水処理の長所が生かされるためには
1. 工業排水のように、含まれているものがわからない水が流れ込むことが無い場合。
2. 下水処理後に大量に発生する汚泥が、自然の循環に戻すことが可能なこと。また、還元できる農地などが処理場の周りにあること。
3. 処理場の放流先である河川などに与える影響が自然の浄化能力を超えない範囲であること。
などが取り上げられていますが、現状ではこの前提条件は乱れているようで、富栄養化の要因など新たな問題へとなった例もある。₁
Ø
浄化の仕組み
図 2 下水道の仕組み₁₀
まず、最初沈殿池に下水が流れ、底に沈んだドロは機械でかき集め、ポンプで引き抜かれます。
次に、反応タンクで汚水に活性汚泥を加え空気を強く吹き込み、中にいる微生物の働きで、汚れを分解し、きれいにします。
それが終わった水は、最終沈殿池へ行き、反応タンクで出た水は、ここをゆっくり流れるうちに先ほど加えた活性汚泥と、綺麗な水に分かれます。
最後に消毒施設で消毒し、川や海へ流します。₁₀
1.
浄化槽
辞書では『し尿、浄化槽を生物処理によって浄化する装置』₈と、なっています。
Ø
浄化槽の種類
浄化槽には二種類あり、し尿の処理のみの多くの家庭で使われている単独浄化槽と、生活排水の処理もできる合併浄化槽があります。ここで出てきている「浄化槽」とは、合併浄化槽のことを指しています。₄
Ø
浄化の仕組み
図 3 浄化槽の仕組み₁₁
こちらは、小型の合併浄化槽です。ほとんどの家庭ではこの小型の合併浄化槽が取り付けられています。
まず左側にある第1室、第2室の2槽で、有機物を分解し、次に隣の槽へ運ばれた水は上にあるブロワーで、空気を送り、こう寄生生物の力で浄化します。そして、沈殿室で浄化した微生物のかたまりを汚濁として沈殿分解され、消毒室で滅菌し綺麗になった水を放流します。₁₁
4.いろいろな視点から
(ア) 浄化能力でのBOD除去率は?
浄化槽では、『初期の浄化槽(単独浄化槽)のBOD除去率の基準は65%以上、合併浄化槽の除去率はBOD90%以上』となっています。
水質汚濁の対策として、合併浄化槽が取り上げられているのは上記のように『BOD除去率が高い』という理由があるからである。₅,₆
図 4 単独浄化槽と合併浄化槽の比較₅
それに対し、下水処理によるBOD除去率については90〜95%程度だといわれています。₇
(イ)
浄化の際に使われる消毒は?
下水道の消毒について使われるのは次亜塩素酸ソーダとあるものには書かれていました。₁₀
それにより、「下水道では水質の改善にない」と言う意見も出されています。₁₃
浄化槽に使われている消毒は「公衆衛生上問題ない水を放流される」とあります。₁₂
*しかし、これ以上のことは見当たりませんでした。
(ウ) 何故、下水道では水質の改善にならないのか
下水道で処理された水の中に”浮遊塩素”(漂白剤のカルキの成分)がごくわずかに含まれていて、これが川の中の微生物に害を与えます。しかし、普通の水道水にも同様に含まれています。人間が飲む分には問題は無いのですが、金魚や熱帯魚には害を及ぼします。
これから判るように、浮遊塩素を含んだ処理水を川へ流すと、微生物や、水辺に射る生き物に影響を与えると思われ、水質の改善にはならないのです。₁₃
そして、下水道の限界を示すものとして有害な化学物質の除去が取り上げられています。現在41項目の水質基準がありますが、環境ホルモン等の新しい化学物質についての規制がありません。₁₆
(エ) 浄化槽のデメリット
浄化槽のデメリットとして、「臭い」と言うものがあります。
そして、日本最初の0-157の発生源も浄化槽であり、あまり過信しすぎるとこんなことも起きるということもあります。
よって、こちらもあまり良いものともいえないようです。₁₄
5.私見
1.
『下水道や合併浄化槽を取り付けるべきか?』
「浄化能力でのBOD除去率は?」のところでも述べたように 、BOD等の除去のためには、できるだけ下水道や浄化槽を取り付けるべきであるし、浄化槽については、図3から見て判るように、し尿より生活廃水のほうがBODを多く川に出しているので、今まで取り付けられていた単独浄化槽ではなく、排水ができる、合併浄化槽を取り付けるべきなのだということです。
しかしながら、まだまだ改善されるべき点もあるので、かなりの効果を期待するべきではない。
2.
『どちらを取り付けるべきか?』
しかし、下水道の場合、「長所が生かされる条件」として述べたように長所を生かすための条件を満たさない限り、新たな問題が発展していることを考えるためと、下水道で使われる消毒の問題もあり、合併浄化槽を取り付けたほうが良いと考えられます。
しかし、こちらにも、臭いといった問題や、0-157などの衛生面的問題や取り付け費などの問題があります。衛生面の問題については、取り付ける際には良く考えることで、経済面に関しては、補助金制度が行われコストが大幅に削減されています。
6.参考文献
1. 上野良治(1991)「よくわかる水問題一問一答」合同出版株式会社
p69-71,p133-136
2. http://www.keihin.ktr.mlit.go.jp/wordbook/yougo/word02/kokyogsd.htm
3. http://www.keihin.ktr.mlit.go.jp/wordbook/yougo/word02/ryuikigsd.htm
4. 土居正二(2002)「どうする21世紀の環境問題
暮らしの中の知らない化学物質 化学物質が汚している地球 大気・土・水」株式会社くもん出版 p29
5. http://www.keihin.ktr.mlit.go.jp/wordbook/yougo/word02/gpsyrjyks.htm
6. http://www.zenjohkyou.net/のhttp://www.zenjohkyou.net/ue.html
7. http://www.hitachi-metals.co.jp/rad/pdf/2001/r09.pdf
14. http://dir.biglobe.ne.jp/col/house/fusui/closeup/CU20010412A/index.htm〜http://dir.biglobe.ne.jp/col/house/fusui/closeup/CU20010412A/index3.htm
7.引用文献
1. 上野良治(1991)「よくわかる水問題一問一答」合同出版株式会社
p69-71,p133-136
3. http://www.keihin.ktr.mlit.go.jp/wordbook/yougo/word02/ryuikigsd.htm
8. http://dictionary.goo.ne.jp/cgi-bin/nw-top.cgi (goo新語辞書)
9. 境健一郎(1997)「手もとるように環境問題がわかる本」株式会社かんき出版p86-89
10.
http://www.city.hiroshima.jp/gesui/syori.html
11. http://www2.nsknet.or.jp/~najhcdm/mann/cogata.htm
12. http://www.zenjohkyou.net/,http://www.zenjohkyou.net/jyoukasou2.html
13. http://www.surfline.ne.jp/hayama.ombuds/clo-1.htm
15. http://gesui.city.fukuoka.jp/gouryuu/
16. http://www.kyoto-np.co.jp/kp/special/water/mizu3_01.html