海面上昇は本当に起こるのか

2003/1/10

c101389 山内啓子

1.問題の背景

 

 20世紀になり、工業化が発達した。それによって、空気中の二酸化炭素も増え、現在では、地球温暖化が世界規模での課題になった。

 地球温暖化は、いろいろな異常気象をもたらしてきた。その中でも、私は、海面上昇が本当に起こるのかを考えたい。

 最近、海面上昇が原因で、太平洋に浮かぶ小さな島国が海に沈むというニュースをテレビで見た。

今、地球はどんな状況で、これからどうなるのかを考える。

 

 

2.報告の目的

 

 海面上昇が起きるとされている原因・理由と起きないとされている原因・理由を一つ一つ検証していき、海面上昇は本当に起こるのか考える。

 

 

3.「海面上昇」とはなにか

 

 

3.1海面上昇とは

 

 海面上昇とは、地球温暖化による気温の上昇によって、海水の熱膨張、陸水の増減、南極の氷やヨーロッパアルプス等の山岳氷河の融解などが原因となって、海面が上昇すること。

 

 

3.2地球温暖化とは

 

 地球温暖化は、温室効果ガスの大気中濃度が増加して起きる。

 

 

3.2.2温室効果とは

 

 温室効果とは、地球の大気中にある温室効果ガスが、地球から宇宙へ出て行く熱を一部逃がさずに、地表を温めること。

 温室効果ガスは、自然からも発生する。しかし、温暖化の原因になっているのは、「人間の活動により発生する温室効果ガスの増加」(1)である。

 

 

3.2.2.2温室効果のしくみ

 

 大気中には、太陽放射を吸収できるガスはほとんどない。だから、太陽放射のほとんどが地表面に吸収される。地表は暖められた温度に応じた赤外線によって、熱は宇宙へ放出されて冷えていく。

 赤外線の一部が大気中のガスによって吸収される。吸収されたガスの一部は、いろいろな方向へ放出される。そのうちの地表へ向かって放出される分は、宇宙へ放出されるべきものが地表に戻した分である。それによって、地表が暖められる。(1)(2)

 

3.2.2.3主な温室効果ガス

 

 温室効果は、「量、強さによって決まる」(2)。主なものとしては、大気中の二酸化炭素、一酸化二窒素、メタン、炭素ガス、フロンガス、水蒸気などが挙げられる。

 

 ・二酸化炭素(CO2)

 CO2は、「人間活動の影響を受ける主要な温室効果ガス」(3)である。

 過去20年間で排出されたものの大部分が化石燃料を燃やしたことによるものであって、残りが森林減少によるものである(3)

 

 ・メタン(CH4)

 CH4は、「自然起源と人間の影響」(4)によって発生する。

 そして、温室効果ガス全体の「20%」(4)におよんでいる。

 

 ・一酸化二窒素(N2O) 

 N2Oは、1750年に比べると「16%」(5)程度増えている。

 また、自然起源と人間の影響を発生源とするもう一つの温室効果ガスで、化学反応によって大気から除去されるものである(5)

 

 ・オゾン(O3)

 O3とは、成層圏と対流圏のそれぞれに存在している温室効果ガスである(6)

 

 

3.2.3間接的に影響をおよぼす温室効果ガス

 

 反応性の窒素化合物(NOx)、一酸化炭素(CO)などがあり、いくつかのガスには対流圏の酸化能力とオゾンの量を抑える。

 また、これらの物質はCH4、他の温室効果ガスの寿命に影響を及ぼすことから、間接的温室効果ガスとして作用する。(7)

 

 

3.2.4フロンガスとオゾン層

 

 フロンは、対流圏からゆっくり成層圏へ達すると、太陽からの紫外線によって、光分解され塩素を放出する。この塩素が、オゾンを破壊する。

 しかし、オゾン自体が不安定な物質なので、自然に出来たり、壊れたりしている。

 しかし、塩素によって、オゾンは壊れるほうが多くなった。これが、オゾン層破壊につながったのである。(8)

 

 

3.2.5熱膨張とは

 

 熱膨張とは、温度の上昇によって、物体の体積が増えることである。

 

 

3.3日本の海岸への影響

 

 気象庁気象研究所によると、1900年に比べて二酸化炭素が倍増したら、「海面気温は、日本海で1.6℃、太平洋沿岸で1.2〜1.6℃。オホーツク海で1.8℃高くなる」(9)と予想される。

 そして、自然沿岸の侵食も激化してくる。とくに砂浜が大きな影響をうける。30cm65cm1mの海面上昇で、今存在する砂浜で、「56.5%、81.7%、90.3%が消失する」(10)と考えられている。

 

 

3.3.2適応策

 

 適応策には、撤廃、順応、防御がある。日本の場合は、沿岸域の土地の利用度が高いので、順応や防御が主体になる。

 現在の海岸防護方式は、複数の施設に外力を分散する面的防護方式がとられている。この方式は、「砂浜の保全や復元の機能が重視され、防護だけでなく、海岸利用や環境保全からも効果的になることが期待されている」(9)

 また、海岸侵食の対策として養浜工が有効になる。

 現在、日本では、861km2の国土が満潮位以下にあって、200万人の人がそこに住んでいる。またそこには、54兆円の資産もある。しかし、100mの海面上昇が起きたら、この面積は「2.7倍に広がり、人口は410万人、資産は109兆円」(9)に広がる。

 

 

3.3.3対策費用

 

 全国規模で港湾施設、港湾海岸の対策費用を算定した結果、「1mの海面上昇に対して、港湾施設の対策に7.8兆円、港湾海岸の対策に3.6兆円必要であり、対策費用の合計は11.5兆円」(11)になる。

 

 

3.4予測される海面上昇

 

 温室効果ガスの濃度が現在の増加率で推移したら、「2025年までに地球全体の平均気温は現在より約1度、21世紀末までに約3度上昇することがあり得る」(12)と予測がされている。そして、海(12)されている。

 

 

3.5海面上昇が起こると考えられている理由

 

 海水の熱膨張、陸水の増減、南極の氷やヨーロッパアルプスなどの山岳氷河の融解などによって、すでに「過去100年に気温は0.3〜0.6℃上昇し、海面は10〜25cm上昇」(13)している。

 

 

3.5.2山岳氷河は後退している。

 

 ここ100年の間に山岳氷河は、気候の変化、気温の上昇に反応して全体的に氷河が薄くなって後退してきた。

 氷河の後退は、「高山で観測された20世紀の0.6〜1.0℃の気温上昇と一致」(14)している。

 そして、氷河の量は、「2050年までに四分の一、2100年までに二分の一が消失する」(14)と減少が予測されている。

 

 

3.5.3世界の山岳氷河の後退

 

 北極圏・・・過去30年間で氷河の量が減少した(14)

 ヨーロッパアルプス・・・20世紀末の氷河の量は過去5000年の間で最も少ない(14)

 ヒマラヤ山脈・・・チョモランマのネパール側にある小型氷河が1960〜75年の間に86%の氷河が後退した。また、東ネパールにある大型氷河は近年、氷河が縮小している。(15)

 南極と周辺の島・・・南極半島、周辺の島の氷河が後退している(14)

 

 

3.6海面上昇が起こらないと考えられている理由

 

 

3.6.2南極大陸の氷は溶けない

 

 地球が温暖化になると、南極も温度が上がるが、南極のほとんどは0℃以下のままで0℃以上になるのは、南極大陸の周辺だけである。

 また、温暖化の結果、海水の蒸発は増え、その水蒸気は南極にも流れ込む。そして、南極の大部分は0℃以下なので、この水蒸気は氷になって南極に積もることになる。この量は、周辺で溶けるよりも多いため、南極の氷は全体として増えることになる。その結果、海水は増えるどころか、逆に減ってしまう。(16)

 

 

3.6.3海水の熱膨張説

 

 深海の海水は、膨張率があまり大きくない。温度が上がって膨張するのは、ごく表面の深さ200m程度の部分だけで、気温が1℃上がったとしても数cmにしかならない。(16)

 

 

4.海面上昇が本当に起こるのか検証する

 

 

4.1海に浮かぶ氷は海面上昇に影響あるか

 

 北極などの海に浮いている氷がいくら溶けても、海水が増えることはない。「摂氏0℃の水が氷になると体積が約11%増加する」(17)ため、氷山は水に浮くことができる。そして、氷山が水になるからといって、海面が上昇することはない。

 

 

4.2陸水の氷は海面上昇に影響あるのか

 

 アルプス山脈、ヒマラヤの氷河の絶対量は、少ないので問題はないが、南極やグリーンランドの氷河は問題になる。

 しかし、南極は夏の時期でも-10℃以下なので、気温が数℃上昇しただけでは、氷は溶けない。それどころか、夏に降雪があるため、温暖化によって夏が長引くことになれば、年間降雪量が増え、氷河は増えるかもしれない。(17)

 

 

4.3陸水、海水は将来どのように変化するか

 

 IPCCは、氷河は21世紀の間、後退しつづけ北半球の積雪面積、海氷は減少しつづけると予測している。

 南極の氷は、降水量が増えることによって、質量が増える可能性が高い。それに対して、グリーンランドでは、流出の増加が上回るので、質量が減少する可能性のほうが高い。

 ここで特に注目されているのは、西部南極氷床である。ここは、氷床が海面下で接地しているために不安定になり、周囲の氷が弱まると氷を流出させるかもしれないのである。しかし、今世紀中には、相当の海面上昇に結びつくような氷の喪失はおこらないという意見が一般的である。(18)

 

 

4.4降水量は将来どう変化するか

 

 地球上の水蒸気、蒸発、降水は将来増加するとされている。

 これは、最近、行われたAOGCMシミュレーションで分かったことである。これによると、降水量が夏と冬の両方で増加すると出たところが、多数あった。

 たとえば、夏では、熱帯アフリカや南極大陸などで、冬の場合だと、南アジアと東アジアでみられた。

 しかし、このシミュレーションでは、オーストラリア、中央アメリカ、南アフリカで冬の降水量が減少すると示した。(19)

 

 

4.5CO2濃度が安定した場合の変化予測

 

 安定化のプロフィール(注)では、CO2は排出を今よりも低くしなくてはいけない。

 海には、大気へのCO2排出の「70〜80%を取り込む」(20)ことのできる吸収容量がある。しかし、この過程には、数百年という時間が必要になる。また、数百年経ったとしても、4分の一は大気中に存在する。そのために、一定のCO2濃度を保つためには、その時の吸収速度に合うように排出を下げなくてはいけない。(20)

 

 (注)将来の時系列を示したもの

 

 

4.5.1気温の場合

 

 平均気温は、CO2濃度安定後も、「100年当たり0.2〜0.3℃程度」で数百年間上昇を続ける。これは、海の時間スケールが長いためである。(21)

 

 

4.5.2海面水位の場合

 

 IPCCは、温室効果ガスが安定化に入ったとしても、数百年の間、海面の水位は上昇するとしている。熱膨張による海面上昇は、500年経っても、考えられる最終的な海面上昇の半分ほどにしか達していない。この長い時間スケールは、「海洋の深層への熱を輸送する拡散過程が弱く、循環過程が緩やか」(21)という特徴によるものである。(21)

 

 

4.5.3氷河・氷床の場合

 

 今ある氷河の末端地域は、将来氷河は溶けるおそれがある。

 たとえ、気候が安定し始めても、氷床は数千年間、気候変化に反応しつづける。現在、南極氷床とグリーンランド氷床は、海面を70cm上昇させることのできる水をもっている。したがって、それらが少しでも変化すると海面上昇に大きな影響をおよぼす。(22)

 

 

5.総合的な検討と総括

 

 ここでは、海面上昇が本当に起こるのを総合的に検討、総括していく。

 結果だけを述べると、海面上昇は、すでに起きている。そして、今後、ますます海面水位は、上昇していく。しかし、地球上のすべての氷河が関係しているわけではない。逆に、南極は、氷河が増えるかもしれないと推測されているのだが、断定することができない。

 CO2濃度が今から安定化になっても、気温が数百年間上昇し続けることが分かっている。450〜1000ppmで安定化させるCO2濃度と、気温との関係を研究してみると、気候システムが21世紀中、以降でかなりの気温上昇が起こることが分かった。この研究によって、安定させるレベルが低いほど、温度変化が小さくなるということも分かった。(21) 

 海面水位も気温と同じように、温室効果ガスが安定になっても、数百年という長い期間、上昇するとされている。

 温室効果ガス、特にCO2を安定させることができるようになったとしても、数百年、数千年をかけて気温も海面水位も上昇することが考えられるのだから、今から、対応策を考え、随時、被害が出るよりも一歩進んでおく必要があるだろう。

 

 

6.私見

 今回、海面上昇について調べてみて、海面上昇にすでに現実問題として解決の糸口をみつけるのが難しいと思った。

 産業革命頃からのCO2が今になって問題視されているのだから、現在排出されているCO2は、遠い未来の子孫たちへ降りかかってくる。わたしたちに出来ることは、観測をつづけ、CO2が増えて気温が上昇し、海面が上昇し、太平洋に浮かぶ小島が沈んでいくのをみて、何とか温暖化をくい止めないといけないと人々に呼びかけることしかできないのだろうか。

 最近、私の住む町内会もゴミ分別、空き缶のリサイクルなどの活動が活発になってきている。この運動が、地球温暖化や海面上昇の進行を少しではあるが、遅らせることにつながるだろう。

 やはり、一人一人の活動によって地球を守ることができるのだ。

 

 

7.今後の課題

 

自分の課題

 

 もっと地球温暖化や海面上昇の知識を増やしていく。

 そして、その知識を役立てていく。

 

海面上昇の課題

 

 世界中で観測データがとれるようにする。

 

8.1引用文献

 

(1)http://www.nord-ise.com/_topix/GH.htm

(2)『環境科学(改訂版)』 吉村雅吉 裳華房

(3)『IPCC地球温暖化第三次レポート気候変化2001』P.35

     IPCC編 気象庁、環境省、経済産業省監修 中央法規

(4)『IPCC地球温暖化第三次レポート気候変化2001』P.3536

     IPCC編 気象庁、環境省、経済産業省監修 中央法規

(5)『IPCC地球温暖化第三次レポート気候変化2001』P.36

     IPCC編 気象庁、環境省、経済産業省監修 中央法規

(9)http://www.env.go.jp/policy/hakusyo/honbun_k.php3?kid=20&serial=10292

(10)http://www.livex.co.jp/okonomi/9802/top.htm

(11)http://www.env.go.jp/press/file_view/php3?serial=2223&hou_id2598

(12)http://www.eic.or.jp/term/syosai.php3?serial=209

(13)http://www.env.go.jp/policy/hakusyo/honbun_k.php3?kid=20&serial=10292

(14)http://www.greenpeace.or.jplibrary/97gw/6kita/kita6.html

(15)http://www.aa.tufs.ac.jp/^gisr/koen/koen13a.htm

(17)http://www.sci.kagoshima-u.ac.jp/^oyo/climate_r.html

(20)IPCC地球温暖化第三次レポート気候変化2001』P.61〜62

     IPCC編 気象庁、環境省、経済産業省監修 中央法規

(21)IPCC地球温暖化第三次レポート気候変化2001』P.62

     IPCC編 気象庁、環境省、経済産業省監修 中央法規

 

 

8.2参考文献

 

(1)http://www.nord-ise.com/_topix/GH.htm

(2)『環境科学(改訂版)』 吉村雅吉 裳華房

(3)『IPCC地球温暖化第三次レポート気候変化2001』P.35

     IPCC編 気象庁、環境省、経済産業省監修 中央法規

(5)『IPCC地球温暖化第三次レポート気候変化2001』P.36

     IPCC編 気象庁、環境省、経済産業省監修 中央法規

(6)『IPCC地球温暖化第三次レポート気候変化2001』P.37

     IPCC編 気象庁、環境省、経済産業省監修 中央法規

(7)『IPCC地球温暖化第三次レポート気候変化2001』P.38

     IPCC編 気象庁、環境省、経済産業省監修 中央法規

(8)http://member.nifty.ne.jp/hary/a-fron.html

(16)『エコロジー神話の功罪-サルとして感じ、人として歩め』

    槌田敦著 ほたる出版 1998年 

(18)『IPCC地球温暖化第三次レポート気候変化2001』P.60

     IPCC編 気象庁、環境省、経済産業省監修 中央法規

(19)『IPCC地球温暖化第三次レポート気候変化2001』P.58

     IPCC編 気象庁、環境省、経済産業省監修 中央法規

(20)『IPCC地球温暖化第三次レポート気候変化2001』P.61〜62

     IPCC編 気象庁、環境省、経済産業省監修 中央法規

(21)『IPCC地球温暖化第三次レポート気候変化2001』P.62

     IPCC編 気象庁、環境省、経済産業省監修 中央法規

(22)『IPCC地球温暖化第三次レポート気候変化2001』P.63

     IPCC編 気象庁、環境省、経済産業省監修 中央法規