基礎ゼミT課題

2003年1月10日

社会学部 社会学科 c102162 佐藤 脩

 

石原都知事の『カジノ構想』の是非

 

 

(1)問題の背景

 

   近年の長引く景気低迷から脱出するためにと、全国各地の自治体や民間グループの間で、その対策のひとつとしてカジノ建設構想が持ち上がっている。その中でも東京都の石原慎太郎都知事は都知事就任以来(以前から?)「文化は人間のアミューズメント(娯楽)から発する。カジノは不況の中、雇用や文化、財源の確保に格好の材料」1)と話しており、特に強くカジノ構想を押している。その石原都知事のカジノ建設に対する熱意の成果もあり、全国的にみても東京都は水面下でこのプロジェクトが最も進んでいる。

   しかし、日本でカジノを実現するためには、治安・風紀の乱れや青少年への影響などを心配する地元住民の理解を得ることが難しいということと、刑法185条「賭博(とばく)行為の禁止」a)の壁という問題が立ちはだかっている。

   競馬や競輪・競艇・パチンコなどのギャンブルが特別法b)によって認められている現在、カジノも合法化へ向け、この刑法の改正への動きが全国各地で活発になってきており、改正されるのも時間の問題といわれている。

 

(2)報告の目的

 

   これまでも国や各自治体では、戦後最悪と言われている不況の対策として世界規模のイベント・大会の誘致や地域振興券の発行などいろいろと取り組んできた。しかし実際のところ、期待していたわりにはどれもあまり効果が見られなかった。いまだに財政困難に苦しむ各自治体にとってカジノ建設案は、経済の活性化への起爆剤・切り札として期待されている。

本当に今、カジノを建設することがこの不況を脱出のための最適な方法といえるのか。このレポートでは、この構想における代表といえる東京都を例に挙げ、カジノが国や各自治体さらには人々にもたらす効果・影響をさまざまな角度から検証して、この問題を考えたい。

 

(3)対象とする問題の概要

 

  カジノについて

T、カジノとは・・・

    ルーレットやポーカー、ブラックジャックなどのカードゲームを備えた賭博場のこと。2)日本では賭博を禁じた刑法に触れる違法行為である。

 

U、世界のカジノ事情

   世界180カ国のうち、カジノを合法化しているのは113カ国。3)サミット参加国(日本含む米、英、仏、独、伊、加、露)でカジノが全面的に禁止されているのは日本だけである。

   アメリカ・ラスベガスのカジノは世界的にも有名で、カジノだけでなく子どもや家族づれなども楽しめるような遊園地やアミューズメントパークなども完備した複合レジャー施設となっている。

 

 カジノ建設候補地

    東京都 お台場臨海副都心        4)

    その他にも、

     静岡県 熱海市

     愛知県 中部国際空港対岸の前島

     大阪府 関西空港対岸

また、具体的な場所は明らかにされていないが、

    石川県、秋田県、大分県、宮崎県、沖縄県も

カジノ建設を検討中

    

  この問題に対する世間の関心

   *インターネットリサーチの株式会社マクロミルによる「東京都カジノ構想に関する調査」5)(東京、神奈川、埼玉、千葉の成人男女517名対象)によると、  

     ・東京都のカジノ構想についての『認知度』は全体の3/4が認知。

・同じく『興味度』は、興味がある・・・ 25.5%

            ややある・・・・35.2%

                 あまりない・・・24.0%

                 まったくない・・15.3%  となっている。

       また、カジノ構想認知者だけに限った『興味度』では、興味があると答える人は約3割に増える。

 

(4)問題に関するいくつかの視点からの検討

 

  <カジノ構想のメリット>

   カジノが東京都の財政赤字回復に貢献

    お台場カジノでの予想される年間売り上げは6000億〜1兆円で1/4が東京都に入るとすれば、税収は年間1500億〜2500億円になる。(これは東京都の住民税収入の約1/3)3)

 

      雇用促進

    カジノを作れば5万〜6万人3)の雇用が見込め過去最低といわれている失業率の解消につながる。

 

      日本のお台場から世界のODAIBAへ

    →日本人がラスベガスと聞くとカジノ街と思い浮かべるように、外国の人からもお台場といえばカジノと認知され、お台場が観光名所として世界から注目され日本人の観光客はもちろん外国からも観光客が増える。

 

   カジノ客の海外流出防止

    →2000年の日本人のラスベガス旅行者は52万人で、一人あたり10万円使う5)とすると、520億円が流出していることになる。国内にカジノができれば海外流出にすくなからず影響をおよぼすことになる。(一部、旅行会社に限ってはデメリットになるか?)

 

闇ギャンブルの減少への期待

    →これまでは、非合法の(闇)カジノしか存在しなかったが、合法化されたカジノができることにより、危険な闇ギャンブルへの人の出入りの減少が期待できる。

 

  <カジノ構想のデメリット>

カジノ周辺の治安悪化

    →カジノでは多額のお金が動くため、暴力団などが出入りする可能性が高い。また、金欲しさの犯罪も増加する。

   

   青少年への悪影響

    →中学・高校生でさえパチンコや競馬に興味を持ち、手を伸ばすようになってきている現代社会で、カジノをつくることは火に油をそそいでいるようなものである。

 

財産を自己管理できない者が現れる。

 パチンコ・競馬などにはまり過ぎて多額の借金をする人のように、自己抑制の効かない人などが、カジノのゲームに熱中しすぎて限度を超えた額の投資をする人が現れる。

 

   以上のメリット・デメリットを比べると、デメリットは上記の3点以外にほかに主なデメリットは見当たらない。またその3点についても、警備や教育を徹底すれば、防ぐことが可能であると考えられるのでカジノ構想はメリットの方が高い。しかし、このテーマ発表後のみなさんの意見で、現状の警備や教育では防ぐことは難しいという意見もあがっている。

   

※上記線部の具体例としては、

   ・20歳未満の人がカジノに入場できないように入場の際の身分確認を厳重にする。(パチンコ・競馬は身分確認をしなくても入場できる)また、外国人にはパスポートを提示させる。

   ・カジノ周辺に警察署を置き、さらに監視カメラも数多く設置する。

   ・学校や家庭で、子どものうちからギャンブルに対しての考えや知識(ギャンブルの楽しさの中にある恐ろしさ)をしっかりと持たせるようにする。

                      ・・・などが挙げられる。

 

 

<参考>世間のカジノ構想への考え(グラフ)

  *前記(3)での調査「カジノ構想についての興味度」で「興味がある」「ややある」と回答した314人を対象4)

(5)総合的な検討と総括

 

(4)で述べたカジノ構想におけるメリットは、税収・雇用の増加、観光名所の誕生など主に東京都にとって利益をもたらすものであるが、その反面、カジノ構想のデメリットで挙げた3点は、損害が東京都に直接跳ね返ってくるのではなく地元住民あるいは客に直接跳ね返ってくる問題である。つまり、カジノ構想実現への是非は、大きく分けて東京都が「財政危機脱出」か「地域・住民の安全」のどちらを選択するかで大きく左右されるであろう。地域や住民の安全を第一に思うのであれば、カジノ建設は非常に難しい。しかし(4)でまとめたようにデメリットの3点はしっかりと対策を立てれば防ぐことが可能と考えられる。

また、<参考>のグラフを見ても世間の意見は、治安の悪化や青少年への悪影響という点よりも、経済効果や娯楽が増えるという点に多く寄せられているのが分かり、カジノ構想に対して前向きな結果になっている。

以上のことから東京都カジノ構想は「財政危機脱出」のために実現させるべきである。ただしその際には、デメリットの3点をケアしなければいけないということを忘れてはいけない。

 

(6)私見

 

   最初、私の個人的な意見としては、今の景気は本当に低迷しているので景気をよくするためのことならば、どんどん実行していくべきだと思っていた。しかし、カジノ構想のデメリットを調べているうちにひと筋にそれだけではいけない問題だと考えさせられた。

 私の家から少し離れたところに大規模なアミューズメントパークがある。そこにはカジノのようなゲームセンターも入っているが、そこに行くとやはりこわおもてのお兄さんたちが結構いる。(近くを夜に通ると、駐車場に大勢でタムロしている。)そこの近所の人は、こういう状況にとても迷惑しているという。こういうことが身近で実際に起こっていて、これが本物のカジノだったらもっとひどい環境になっているんだろうなと思う。だからこれからカジノ建設が認められたならば、こういう身近なところもしっかりと対策を立てて欲しいと思う。そうすれば誰からも愛されるカジノとして地域に認められ、たとえ、本来の目的である景気回復にあまり効果がなかったとしても新たな娯楽施設として人々に歓迎されるだろう。

このカジノ構想の問題は、東京都だけでなく私たちの住む愛知県にもいえる問題である。それは、近い将来、中部国際空港対岸の前島にカジノ建設を検討しているからである(東京都ほど検討は進んでないが)。なので、多くの人にもこの問題について知っていて欲しい。

 

(7)参考文献

 

1)・・・朝日新聞・朝刊 2002年10月18日 3面 東京

  2)・・・宮崎日日新聞社

http://www.the-miyanichi.co.jp/mnie/p02.php3

  3)・・・Sma STATION!!

http://www.tv−asahi.co.jp/ss/07/issue/top.html

4)・・・asahi.com:旅

http://www.asahi.com/travel/walk/saisei4.html

5)・・・macromill−プレスリリース

http://www.macromill.com/clt/press/press_20021004.cfm

  6)・・・カジノ支援委員会

http://cool.cside.com/casino/  

 

<法律について>

a)・・・185条 賭博をした者は、50万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。(常習賭博及び賭博場開張等図利)                

http://www.mm-labo.com/business/netbusiness/gambling/CriminalLaw.html

   b)・・・畜産や自転車など機会工業の振興、地方財政の健全化などをねらいとした特別法・・・朝日新聞夕刊2000年7月14日1面 西部

 

そのほかにディベート後の皆さんの意見も参考にさせていただきました。