基礎ゼミI 最終レポート

 

                                                                            2003110

              社会学部 社会学科 C102146 近藤真也

 

愛知万博は開催するべきか、しないべきか

 

 

1.     問題の背景

 

2005年3月25日に、愛知県瀬戸市、長久手町及び豊田市において、愛知万博(2005年日本国際博覧会)が2005年の9月までの185日間、開催される。日本で開かれる大規模国際博は70年の大阪万博以来である。1)

そこで、今回開かれる愛知万博を開催するにいたって、開催地の市民や愛知県、その他の都道府県に住んでいる住民からの開催反対意見・開催反対運動や、現に始まっている自然破壊の問題、開催場所である愛知青少年公園の利用者の問題、または、地域住民のプライバシーの問題など、まだまだ他にも数多くの問題が挙げられていることから、事態は深刻になっている。

そして、愛知万博開催までは2003年1月10日現在の時点で、あと805日と迫っている。

このように様々な問題を抱えている中で果たして、今回の愛知万博は成功することができるのであろうか。

 

 

2.     報告の目的

 

私は、愛知県に住んでいて、国際博覧会には行ったこともないので、実際に2005年に開かれる愛知万博には足を運んでみて、地球社会について考えてみようと思っている。

今現在、世界中では人口問題、エネルギー問題また、地球環境の問題などの問題が人間に降りかかってきている。そんな中で行われる2005年愛知万博では、このような問題に対して、問題に対する解決の方向性を見いだして、世界平和に向けての試みといえる。

しかし、開催するにいたって、「日本の産業及び開催運営等を行うことにより、日本の産業及び文化の発展を促進し、もって21世紀の地球社会の発展に寄与すること」2)を、この愛知万博の目的としている中で、実際に今現在、数多くの問題が浮上してきている。

よって、私は、現在多く浮かび上がっている問題を一つでも解決できるように自分で答えを見つけ出し、今回の愛知万博で、世界中の人々が生きていく上で、まだまだより多くの文化・文明を知って21世紀を生きていくため、素晴らしい万博にしてほしいと願っていることから、愛知万博は開催するべきなのか、しないべきなのかメリット・デメリットを挙げ、また、実際に学生のアンケートから、愛知万博に参加するかどうかなどという質問から認知数までを調べてみて、万博に対してどのように思い、感じているのか考えてみることにする。

 

 

3.     対象とする問題の概要

 

愛知万博開催についての経緯

「愛知万博とは」3)

2005年に愛知県瀬戸市などを会場にして開幕予定の国際博覧会。正式名称は2005年日本国際博覧会。略称は愛知万博。愛称は愛・地球博。21世紀に人と自然がいかに共生していくか、という言葉を掲げ、「環境万博」を標榜している。

 

「テーマ」4)

自然の叡智  サブテーマ1)宇宙、生命と情報 2)人生の‘わざ’と智恵

              3)循環型社会

 

「万博会場」4)

愛知県瀬戸市の南東部、長久手町の愛知県青少年公園、及び豊田市の科学技術交流センター予定地の約173ha

 

「入場者数」4)

目標入場者数:1,500万人

 

「開催期間」4)

2005325日〜925日(185日間)

 

「ここに至るまでの簡単な経緯」5)

1994年   ○地元において2005年に国際博覧会を愛知県に誘致することを決定                              

 

1995年   ○愛知県における国際博覧会の開催申請についての閣議了解

 

1996年4月 ○日本国政府からBIE(博覧会国際事務局)に対して開催申請書を提出

 

1997年6月 ○第121回BIE総会で日本開催が正式決定(カナダと競合)

 

1998年2月 ○博覧会協会の企画運営体制発表。「EXPOの耳」開設

 

2000年10月 ○2000年ハノーバー国際博覧会閉幕

        ○2005年日本国際博覧会(愛知万博)へのBIE旗引渡しセレモニー開催

 

2001年4月 ○国際機関「生物多様性条約事務局(カナダ:モントリオール)」の参加表明を受理(参加表明第1号)

       ○国際機関「アジア生産性機構(本部:東京)」の参加表明を受理

 

     5月 ○「カナダ」の参加表明を受理(国としての参加表明第1号)

       ○「ボリビア共和国、スペイン、ウガンダ共和国」の参加表明を受理

  

     6月 ○「ウズベキスタン共和国、シリア・アラブ共和国、ブータン王国」の参加表明を受理

       ○国際機関「国際連合教育科学文化機関(UNESCO/ユネスコ)(本部:パリ)」の参加表明を受理

 

7月 ○「コロンビア共和国」の参加表明を受理

   

8月 ○「サウジアラビア王国、モナコ公国、モーリタニア・イスラム共和国、チャド共和国」の参加表明を受理

 

9月 ○「ガーナ共和国」の参加表明を受理

     ○国際機関「国際連合地域開センター」(本部:名古屋)の参加表明を受理

 

10月 ○「ベナン共和国、シンガポール共和国、ギニア共和国、アラブ首長国連邦」の参加表明を受理

 

11月 ○「モザンビーク共和国」の参加表明を受理     

 

12月 ○「ネパール王国、インド、スイス連邦、ブルンジ共和国、カメルーン共和国」の参加表明を受理

 

2002年1月 ○「チェコ共和国、ラオス人民民主共和国」の参加表明を受理

       ○経済産業省より2005年日本国際博覧会の愛称「愛・地球博(Exposition of Global Harmony)」が公表される

 

        2月 ○「タンザニア連合共和国」の参加表明を受理

         ○2005年日本国際博覧会(愛・地球博)のイメージソングを元X JAPANのYOSHIKI氏に制作を依頼

 

         3月 ○「大韓民国、キリバス共和国、フランス共和国」の参加表明を受理                       

 

        4月 ○「リトアニア共和国、ケニア共和国、モンゴル共和国、ルーマニア、ラトビア共和国、グルジア」の参加表明を受理

     

         5月 ○「イエメン共和国、キューバ共和国、スリランカ民主社会主義共和国、ロシア連邦、イラン・イスラム共和国」の参加表明を受理

 

         6月 ○皇太子殿下が2005年日本国際博覧会(愛・地球博)の名誉総裁にご就任

          ○愛・地球博公式マスコットキャラクターの愛称発表(「モリゾー」&「キッコロ」)

        

         7月 ○「コートジボワール共和国」の参加表明を受理

 

        8月 ○「インドネシア共和国、ギニアビザウ共和国、ポーランド共和国、中華人民共和国」の参加表明を受理

 

         9月 ○「ベトナム社会主義共和国、ドイツ連邦共和国」の参加表明を受理

 

      10月 ○「カンボジア王国、ギリシャ共和国、ルワンダ共和国、ブルガリア共和国」の参加表明を受理

 

      11月 ○「メキシコ共和国、カザフスタン共和国、ウクライナ、ヨルダン・ハシミテ王国」の参加表明を受理

           ○国際機関「イスラム会議機構」の参加表明を受理

 

2005325 ●愛知万博開催

 

 

4.     問題に関するいくつかの視点からの検討

 

○愛知万博開催のメリット

       万博は県外、国外に愛知(瀬戸)を知ってもらうチャンス。

       万博開催によって、既存企業のレベルアップ、新産業の創出、文化、芸術のレベルアップ、人材育成、市民活動の活性化を通し、県民生活の充実を図る。

       世界の人々との交流が深められる。

       環境に対する取り組みとして、資源やエネルギーを無駄無く使う工夫やごみを

減らすために、リサイクルに対する関心が高まる。

       万博で企業が出展することによって、その企業の宣伝効果に繋がる。

       万博開催で、自然と共生する人間の暮らし方を世界中の人々に提示でき、将来の地域づくりに活かすことができる。

 

  ○愛知万博開催のデメリット

         環境が破壊される。6)

1.万博開催のため、名古屋グリーン道路(名古屋東部丘陵の森の中を抜ける道路)  が拡張され、開催場所の青少年公園の一部が切り取られ、何万本の雑木がすでになくなり、森は裸地化している。

2.東海地方に生息する謎の木モンゴリナラ、万博アセスでは注目すべき植物として取り上げられているが、その一部は枝も払われ、愛知県立大学の近くの空き地に移植されている。その光景はまるで、雑木の墓標のように見える。

3.万博会場への交通手段として作られている瀬戸環状東部線は、豊かな二次林だけでなく、水田までも消失させようとしている。

4.愛知県ではオオタカより貴重とされているはハチクマ注T)2001年に営巣したが、万博会場建設工事や関連工事、また、多数の入場者や森への入り込みで、ハチクマ営巣への脅威になり、ムササビ、キツネ、タヌキ、フクロウなどにも影響が出る。

  ・ 財政が赤字なのに、万博を行って回復することは不可能。

       万博のもつ意義が現代の社会に合わない。

       万博の跡地の利用法が問題。

       万博に合わせて開港する中部新国際空港の建設費用捻出。

 

      今回開かれる2005年の愛知万博開催にいたって、愛知県は、県外や世界中に名を知ってもらえ、また、世界中の人々とのコミュニケーションをより一層深めることのできるチャンスであり、環境問題に対しても一人一人が地球を守っていくために何かできることを理解することができる機会であるが、その裏には、自然豊かな土地を削って、万博開催地を作らなければならなく、また、万博開催に関する建設工事などがその土地に生息している生物への脅威にもなってしまっている。

 

○愛知万博開催についての賛否論調査7)

(県議会、自由党・ローカルパーティーズ調べ)

賛成・・・33.6%  反対・・・33.4%  どちらでもない・・・33%

賛成理由の第一位・・・県の発展に寄与する。(40%)

反対理由の第一位・・・県民負担が大きい。(46%)

どちらでもない理由・・・判断情報がない。(37%)

 

地域別では、名古屋市などの都市部では、反対が多く、瀬戸・豊田などの開催地近辺では、賛成が多数を占めている。

 

○愛知万博学生アンケート結果発表8)

 開催年

開催年の認知率は20.5%、認知せずは79.5%

 

開催自治体

   開催自治体(瀬戸市)の認知率は51.4%、認知せずは48.6%

 

開催場所について

開催場所(海上の森)の認知率は13.3%、認知せずは86.7%

 

 開催期間について

開催期間(6ヶ月間)の認知率は4.9%、認知せずは95.1%であり、20人に一人しか認知者がいない。

 

愛知万博への参加

愛知万博が開催されたら行きたいか行きたくないか

  行きたい・・・20.8%  行きたくない・・・31.5%  分からない・・・46.2%

  不明・・・1.5%

 

    愛知万博に対する賛否

  賛成・・・7.0% どちらかというと賛成・・・8.3% 分からない・・・31.4%

  反対・・・28.1% どちらかというと反対・・・23.2% 不明・・・2.0% 

 

全問不正解者では、「分からない」が4割を超えている。正解者が増えるに連れ、「分からないが」が減少し、「やや反対」、「反対」が増加している。万博計画について知るに連れ,万博開催を否定的に見る人が増えているということが分かる。

 

東海地方の学生は、愛知万博開催に対しては反対の意見を持っている人が多いが、その万博についての認知率はとても低く、万博関連の情報は色々なルートから流れてきて知ったとしても、何が万博で行われるのか、いつ開催されるのかなどと、万博の計画の詳細はあまり分かっておらず、興味もあまりないものだと考えることができる。

 

 

5.     総合的な検討と総括

 

愛知万博を実現させるためには、日本国内はもちろんのこと、世界中の人々の積極的な参加や企業、国家、国際機関などの積極的な協力がなければ成り立たないことであり、これらのものが一つとなって、国際的な素晴らしい最高の文化行事となるだろう。

開催の地である愛知県の学生は、万博開催にいたって反対の意思が強い人が多いけれど、もっと万博の詳しい詳細から現在問題とされている事柄に関してまでも関心を持って情報を知り、考えることをしなければならないだろう。

 

 

6.     問題に関する私見

 

愛知万博が開かれるにあたって、愛知県を世界中の人々に知ってもらい、また、これからの日本の文化や産業の発展を促進させていくことに繋がることが分かったけれど、その裏には数々の問題が生まれていることを知った。

私は、確かに2005年に開かれる愛知万博の開催にいたって、開催地を作るのに山を削って自然を壊してしまうことから、快く開催するべきだとは言えない。しかし、開催するならそうしてしまった分、この万博で環境に対する意識を強く高め、日本の人々はもちろん、世界中の人々にも現在の地球問題についての理解を深めてもらい、「環境破壊によって何が起こるのか。」「環境破壊をこれ以上進行させないために、自分達は地球のため、自分自身のために何ができるのか。」などについて改めて考えるべきである。

このように環境に対する見方をこの愛知万博で考え直させてくれることを期待して、私自身も自ら愛知万博に足を運び、地球環境について勉強し、自分自身で考え、少しでも多くの解決方法を探し実践していこうと思う。

また、日本の人達と世界中の人達との交流から、これからも生きていく上で、生きることの楽しさを、共に分かり合えるような人類のこれからの未来に対して貢献できるような万博にしてほしいと願っている。

 

 

7.     参考文献

 

1) 20021017日付 朝日新聞夕刊 9面 

 

2) http://www.expo2005.or.jp/jp/assoc/

 

   3) 電子ブック版「朝日現代用語・知恵蔵2002」

 

4)http://www.expo2005.or.jp/jp/info/

 

5) http://www.expo2005.or.jp/jp/study/schedulec_2001.html

 

  6) http://www.h2o.or.jp/~banpaku/Gazou_Sizenhakai.html

 

   7) http://member.nifty.ne.jp/NAZ/expo.html

 

  8)http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Icho/2865/souko/utida-aq-22.html

     調査対象 東海地方の大学生、予備校生、専門学校生

  

8.    

 

注T) タカの一種。体長60センチほどで、オオタカとほぼ同じ大きさ。日本と東南アジアを移動する渡り鳥で、巣が発見されるのは珍しい。準絶滅危ぐ種とされている。