2005年1月31日
迫り来る食糧危機
経済学部 経済学科
E103237
⒈問題の背景
現在、全人類の7分の1に当たる8憶4000万人の人々が慢性的飢餓で常に苦しんでいて、毎日2万4000人もの生命が飢餓によって失われているといわれている。
21世紀の食料問題について、人々の意識をあおるような報道が増えており、それらの報道では21世紀の第1四半期(2010〜20年代)に何らかの形で食料供給に支障をきたすということが想定されている。
今はまだ発展途上の国の一部だけであるが、本当に世界規模の食料危機が訪れてしまうのだろうか。また今の状況や今後どうなるのか、そしてそれらに対する対策について考察する。
⒉報告の目的
食糧危機とは何なのか?どのような要因で食糧危機がおこるのか?そしてどのような対策や対応が必要なのかを考えていきたい。そして、今飢餓で苦しんでいる人達に私たちは何をすることが出来るかを考える。
⒊食糧危機の原因
[1]全国規模の人口増加
世界人口の予測 ※1
|
1995年 |
2010年 |
2025年 |
1995=100 |
|
2010年 |
2025年 |
||||
世界全体 |
57 |
69 |
80 |
121 |
141 |
先進地域 |
12 |
12 |
12 |
103 |
104 |
開発途上国 |
45 |
57 |
68 |
126 |
151 |
アフリカ アジア 中国 インド |
7 33 12 9 |
11 40 14 12 |
15 47 15 13 |
146 122 112 124 |
202 141 121 143 |
(単位:億人)
1995年に57億人だった人口は、2010年には69億人、2025年には80億人と増加していき、そのほとんどが開発途上国での増加である。過去の歴史を見てみると、人口が増加すると、疫病や飢餓の大量発生などの要因が働いて、人口抑制の方向へコントロールが働いてきた。ところが、このコントロールが効かなくなったのは、第二次大戦後あたりである。乳幼児の死亡率の低下、医療技術の進歩による高齢化などが進んで、人口増加が急激に進んだ。
最近では、子供の養育費、都市環境の悪化などの事情もあり、先進国での人口増加率は2%を切ったが、途上国ではしばらく人口の増加は続くと予測されている。※2
[2]発展途上国における食生活の高度化※2
1人あたり肉類消費量の推移を表した表である。先進国全体では、肉類の消費量は減少方向にあるが、問題は、ブラジル、中国、そのほかの開発途上国での肉類の消費量である。欧米諸国とは消費量に差があるものの、急ピッチで増加していて、このペースで増えていくと、穀物の需要量も大幅に増加し、最低3%の農業増産が必要になってくる。
人間が穀物のまま、食べるのであれば、生産量イコール消費量になるが、家畜を通した場合、牛の場合8〜10倍、豚5倍、にわとり2〜3倍の穀物を消費する。
食生活の高度化が、作物の生産量を圧迫しているのである。
FAO『国連食糧農業機関』※2
[3]農業改良の限界
農地面積をそれ以上増やせなくなったこと、1人あたりの農地面積が減少したことなどが原因である。
これまで農地だった土壌が劣化してきて、砂漠化や土壌の劣化などが進み、世界では1年間に500〜600万ヘクタールもの農地が砂漠化している。一方では森林を破壊して大規模な農地が作られているが、土壌の劣化は深刻になってきているので、近い将来に飛躍的に農地が増加する可能性は低いだろう。
しかしもっと深刻なのが、水資源の問題である。農産物の価格は工業製品にくらべると、割にあわないのである。同じ1トンの水を使うのにも、農業用水として使うよりも工業用水として用いるほうが、ずっと生産性が高い。競合がおこった場合、ほとんどの場合、農業が競争に負けてしまうのである。※2
まとめると
1、 農地はこれ以上増やすことは出来ない
2、 水資源が確保できない
3、 土地の面積も増やせない
4、 単収も上がらない
このような深刻な事態が世界各国で起こっているのである。
4.改善策とそれに対する問題点
現在の食糧不足に加えて、今後増加する人口に対して十分な食糧を供給するには、農業生産を現在の3倍にしなければならないと言うのが一般的な見方である。果たしてこれが実現できるかというと、事態は非常に厳しいと言わざるを得ない。
世界の耕地面積を増やすことはもはやそう簡単ではない。森林を切り開けば、砂漠化や二酸化炭素増加など環境問題にぶつかってしまう。むしろ、農業改良の問題でも述べた様に灌漑地の劣化などで使えなくなる土地が増えるのを食い止めるので精一杯だろう。そうなると単位面積あたりの収穫量をさらに上げるしかない。※3
ところが最近この収穫量は横ばいになりつつあるのが現実である。その理由は、二つ考えられえ、「緑の革命」1)がほとんどの地域に広がりさらに改善の余地がなくなってきたこと。 もうひとつは穀物の生産過剰気味から価格低下が起こり新たな投資をして生産量を増やそうと考える農家が減っているということである。
穀物の問題
たとえばインドでは一人当たり年間穀物使用量は約200Kg。それに対してアメリカは900Kgに達する。これは穀物を食べるのではなく、牛肉やチーズ・卵・牛乳などの形で間接的に消費している量のほうがはるかに多い。牛や豚が肉になるまでには野菜になるのに沢山の水を消費しているのと同じく、大量の穀物を消費しているのだ。(牛肉1Kgを作るのに7Kgの穀物が必要、穀物1Kg生産するためには水1トン必要。養殖魚であれば1Kg増やすのに穀物2Kgで済む。)※3
経済力の向上とともに肉や乳製品の消費も増えてくる。つまりインド人や中国人が経済力向上に伴ってアメリカ並みの食生活をしたとしたら、とたんに穀物は不足するのである。 そのインドは2050年には人口16億人で中国を抜いて世界一になる予測である。
世界の飼料穀物の需給動向
資料:USDA「Grain: World Markets and Trade」
注1:数量はトウモロコシ、ソルガム、大麦、えん麦、ライ麦等の合計
注2:02/03年度は見込み、03/04年度は予測 ※4
中国の問題
中国は今後も人口が増え続け2030年には、年間約4億8000万トンの穀物を消費する。ところが中国では、水飢饉、農地の砂漠化、工業化などで2億6300万トンしか生産できない。従って残りの2億トンは輸入に頼らざるを得なくなる。これは1993年の世界全体の穀物輸出量に匹敵するそうだ。しかもこれは控えめな数字で、中国の経済発展によっては、食生活の改善が進み、不足量は4億トン近くに達するかもしれない。これだけの大量需要にこたえられる農業生産国はない。つまりこれだけで世界の食糧不足は危機的な状況になると考えられるのである。※5
⒌私たちに出来ること
今現在、すでに南アフリカやアジア諸国などの慢性的な飢餓という大変深刻な食糧問題が起こっている。そのことに対し、私たち日本人でも参加でき、少しでも難民の人々が生きていくための手助けが出来るように、いろいろなNGO団体3)や企業が募金活動に力を入れている。そのいくつかを紹介する。
募金
・ 「FAO 飢餓撲滅草の根募金(テレフード募金)」
AFO社団法人国際食糧農業協会 http://www.fao-kyokai.or.jp/funds/
・ 「冬募金 2004」
hunger free world http://www.hungerfree.net/index.html
・ 「アフガン いのちの基金」
ぺシャワール会 http://www1m.mesh.ne.jp/~peshawar/
クリック募金
クリック募金とはスポンサー企業が私たちに代わって、支援団体等に募金(寄付)を行う仕組みである。クリックした私たちには金銭的負担は一切かからない。1円も払うことなく、クリック1つでだけで募金活動に参加できるのである。
・ 「西アフリカ貧困解消支援」
味の素 http://www.ajinomoto.co.jp/phila/index.html
・ 「飢餓撲滅支援」
IPB http://as.dff.jp/dnt.php?dntcd=D005
6.今後の課題
食糧危機とは、まさに今ある現実の危機である。このまま行けば食糧危機は必ずやって来る。日本は食糧自給率2)40%という自給率が低い国であるため、他の国々より、食糧危機に陥る可能性が極めて高いといえる。今のうちから人口問題も含め、いろいろな角度からの対策を真剣に進める必要がある。
また牛や豚を太らせるためだけの穀物を減らし、難民に穀物がいきわたるようにするべきであると思う。私たちが食べる肉をおいしくするための穀物でたくさんの難民が救えるだろう。
⒎.私見
食糧問題という人類にとって大きな課題を調べて、今、自分がいかに幸せな生活を送っているのだということをあらためて確認できた。そして、今の自分に何が出来るだろうと考え、たどり着いた答えは、ただ食べるのだけではなく、この問題に対して危険意識をもちながら消費することだと思った。今の日本はどこの国より食材を無駄にしている。そのことを一人一人が意識して見直していかなければならないのだろう。
また、どこの世界もいつ食糧がなくなってもおかしくない状況におかれていることを忘れてはいけない。『今がよければ』などとは決して考えないでほしい。特にクリック募金は私たちの想いがすぐ形になり、最も早くて簡単な手助けだと思う。私はこのサイトを知り、インターネットを立ち上げると、必ずクリック募金をするようにしている。
このクリック募金をみんなが知り、たった一回のクリックでも実践すれば、きっと何十万人という命が助かるかもしれないだろう。
⒏参考文献
※1
http://www.maff.go.jp/soshiki/kambou/kikaku/chousakai/syokuryoubukai/2kaisiryou/2-3.html
※2
http://www.ecology.or.jp/crisis/9911/happyou1.html
※3
http://members.jcom.home.ne.jp/stolatos/essay2/food.htm
※4
http://lin.lin.go.jp/alic/month/fore/2005/jan/grain01.htm
※5
http://www.clb.mita.keio.ac.jp/econ/terade/cons/mitaron/ryt.pdf
⒐注
1) 緑の革命 それまでと同じ耕地面積で高収量を上げるよう品種改良された作物を植え、劇的に食料生産高を上げたもの。
2)食糧自給率 国民が消費した食料を国産でどの程度まかなえているかを食料全体について示した指標。
3)NGO団体 Non- Governmental-Organizationの頭文字の略語。「非政府組織」「非営利組織」の立場から国際協力に取り組む市民主体の組織。