身体活動と健康

健康を維持・増進するためには生活習慣をより良く保つことが有用であることは,これまでの多くの疫学研究から明らかにされています.ひと口に生活習慣と言っても,食生活,お酒やタバコ,そして運動や休養などライフスタイル全般が対象になります.このうちの身体活動や運動習慣は,子供から老人までの幅広いライフステージを通じて健康の維持増進に役立つものです.例えば,青少年には身体の発育発達を促進し,中高年に対しては循環器疾患,糖尿病などの生活習慣病を予防し,高齢者においては死亡あるいは自立能力障害の予防に効果があると言われています.運動と言うと額に汗して呼吸が荒くなるようなものをイメージしがちですが,ガーデニングや趣味などのような身体活動もまた有効であり,このような身体活動を1日当たり3 時間以上する人は,それ以下の人に比べて心臓血管疾患の発症の危険度が約3 割,死亡の危険度が2 割ほど減少するという報告があります.また,歩行やサイクリングのような運動を20 分間・週3 回以上行うと心臓血管疾患発症の危険度および死亡の危険度はおおよそ3 割ほど低下することが認められています.さらに,身体活動の継続は抑うつや不安を軽減し,セルフエスティーム(自尊感情)や心理的安寧を高めること,および社会参加,対人交流,生きがいの創造と維持などの社会性の向上に効果があることが報告されています.このように,身体活動や運動は身体的健康状態のみならず,心理・社会的健康状態にも良い影響を与えることが明らかになっています.

身体活動と生活習慣病との関連性